最終回。
前々回黒が浮くと書いた。しかし冷静に考えればそんなのは設定次第で結構変わるものなので、比較するなら条件をある程度整えないと公平ではない。私は基本的にアンチソニー寄りなんだけど、中傷は嫌なので前より少しマシに比較してみた。
CECH-ZED1J(以下ZED1J)に対する比較対象は、とりあえず手近にあったAcerのS221HQLbd、ドスパラのGalleria-MR4、そして東芝レグザ42Z1の3つ。液晶パネルはZED1JがVA、AcerとドスパラがTN、レグザはIPS。素性的に黒の締まり(というか光漏れ)はVA→IPS→TNの順で悪くなるはず。ナナオとかWestinとか別の部屋のは持ってくるの面倒くさいのでパス。ちょっと古いし。
まずはそれぞれ工場出荷時設定に戻す。レグザに関してはDefaultでLEDのエリア駆動がONになって不公平なのでそれをオフ、明るさ検知もオフ。画質モードを標準に設定。
ZED1Jのバックライトは工場出荷で最大輝度になるので比較には都合が良い。画面を全白にして他機種の明るさをZED1Jに合わせる。セコニックの露出計を反射光モードで画面中央に密着させて測定したところZED1Jは12.4EVだった。Acerはバックライト調整が出来なかったので明度で合わせ、MR4とレグザはLEDバックライトの輝度を調整。これで色合い以外は同じ。
そして画面を全黒にする。
まずAcerとZED1J。左がAcer、右がZED1J。(右の輝点はマウスカーソル)
MR4も同じような傾向だったので画像省略。全体的に光漏れはTN液晶よりかなり少ない。しかし画面の下部だけ比べるとそんなに変わらない所に作りの甘さが伺える。導光板の設計が悪いのか、LEDの据え付け精度が甘いのか。
ただ不思議な事に、実際の静止画や動画を見ると印象は逆転する。これは写真撮っても良く再現できないのだが、理由は後ほど判明したので後述。
次にレグザとZED1J。小さいのが当然ZED1J。 輝点はマウス、下部の輝線は隠れたタスクバー、左上はゴミ箱(^^;
生コントラストのカタログスペックはレグザが1300:1、ZED1Jが5000:1。しかしそこまでの差は感じない。若干ZED1Jが暗いかなといった程度。やはりVA液晶だから凄く黒が締まるという訳ではないようだ。というかカタログスペックを盲信しちゃダメだと良く分かる。(本当に黒を求めるならプラズマにしろという事だろうけど。)
そして、全黒→全白のグラデーションを表示してみると。
これで黒浮きに見えていた疑問が氷解する。この写真だとちょっと解りにくいがZED1Jは妙に暗部のガンマが立ってるのだ。要するに映像信号が真っ黒なら良いが、少しでも輝度が上がるととたんに明るくなる。これが黒が沈んでないと感じる原因だったらしい。ZED1Jは画質モードで若干変わるものの明示的にガンマ調整できないのでどうしようもない。(ちなみにシネマモードにすると、もっとガンマが立つ。何故。逆じゃないのか。)
これは想像だが、ゲームは画面の細部が暗いものが多いのでまず見える事を優先したのではないか。黒浮きを気にして見辛くなるよりもゲームの進めやすさを優先したと。あとは3D時には余計暗くて見にくくなるのでこんな仕様なんじゃないかと。それはそれで正しい判断かもしれない。
グラデーションの階調に階段が出来ているのは安物パネルだからだろう。笑えるけど値段が値段だけにこんなものか。
結論として、階調に関してZED1Jは完全にゲームの事しか考えていないチューニングのディスプレイという事になりそうだ。PS3とPSP以外の接続は可能だがオマケ、文句は言うなというスタンスの製品という事らしい。
しかしこのチューンならVA液晶である必要がない。そもそもVAのくせに視野角も狭いし輝度も低い(測定時は合わせたが、最大輝度はレグザやドスパラの方がかなり高い)。 それなら安いTN液晶で値段もっと下げても良かったんじゃないかと思う。応答速度大差ないんだし。
結論。2Dゲームにしか使わない人以外お勧めできません。