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PCオーディオ

こないだ音楽BDのニュースをケナしたところだけど、折角なのでイマドキのPCオーディオについて少しだけ調べてみた。 んだが。

頭痛くなって途中でやめた。アナログ時代よりもオカルト度が増してないか?

痛い話題は大きく分けて、ハイレゾ音源とDAC(+ヘッドホンアンプ)とプレーヤーソフトの3種類に分かれるようだ。

まずハイレゾ音源。CDの16bit/44.1kHzを超える量子化数とサンプリングレートを持つ音声ファイルだが。

「24bitは明らかにダイナミックレンジが広い」「音が繊細」「輪郭がはっきりする」「薄皮が一枚剥けたよう」等々。

まずダイナミックレンジだけど、16bitのダイナミックレンジは96デシベル、24bitは144デシベル。音圧は6デシベルで2倍だから、そりゃあbit数が多い方が小さな音から大きな音まで再生できる事になるが。ここで0デシベルが成人が聞き取れる最小音量と定義されているけど、0デシベルと144デシベルを別々に鳴らして双方聞き取れるかって話ではない(そもそも96も144も爆音で大抵の人は鼓膜が追従しないが)。そんなのボリューム調整したりコンプレッサーかけたりすれば済む話だからだ。オーディオ的には大きい音と小さい音が「同時に」鳴っているのを聞き分けられるかがダイナミックレンジの感じ方だが、人間の聴覚はおおよそ50~60デシベルの差までしか分離できない。CDでも過剰なbit数なのだ。16bitがダイナミックレンジ足りないとか言ってる人の耳はきっと犬並なのだろう。

ついでに、市販のアンプのS/N比は数十万円クラスの製品でもせいぜい100デシベルちょっとしか無いのはクラスのみんなにはナイショだよ?

次に音の繊細さとか輪郭とかは、きっと量子化時の分解能の事を指しているんだろう。でもこれもダイナミックレンジと内容は一緒。人間の感知限界より下なのに聞き分けられるって超能力。

そしてサンプリングレート。良く出てくるのが「人間の耳は20kHzまでしか聞こえないが、それ以上の高周波の存在が可聴域に効いてくる」との説。

...これはフーリエ級数に真っ向からケンカを売っている。周波数が違う音成分は直交する。つまり互いに一切影響しない。たとえ30kHzがガンガン出力されていても、20kHz以下の波形には全く影響しない。少しでも大学で初歩の数学をかじった事がある人なら当たり前の数学だと思うんだが。

唯一影響する可能性としては、高周波の存在がアンプに何らかの影響を与えてそれが可聴域に波及する事はあるかもしれない。しかしそれは原音にはあり得ない現象なんだから、単なるアンプの歪み。

あと耳では聞こえないが体表面が高周波を感知して、耳からの音と脳味噌で合成しているという話も良く目にする。アホか。耳が不自由な人は皮膚感覚も無いって事か。聴覚障がい者に謝れ。

DACやプレーヤーソフトについても人間を超えた感覚を持つ人が多すぎて読んでられない。よく見るのがプレーヤーソフトからDACへデータを送る際にカーネルミキサーを通すと音が悪くなる、という話。DACへダイレクトにデータを送るために、WASAPIとかASIOとか使えよと言うのだが。確かにOS側ミキサーで音量絞って、DAC後に音量上げたらbit数削るのと一緒だからノイズは増えるだろう。ダイナミックレンジも減るだろう。しかしミキサー側で充分な音量取って、かつ入力ソースとオーディオインタフェースのサンプリングレート&bit数が一致していれば、リサンプリングしないので音質は劣化しない。別にフィルター掛けてる訳じゃないんだし、ましてやアナログミキサーじゃないんだからさ。

この辺iTunesだと実験できないのでFoobar2000というプレーヤーを使って、通常のドライバとWASAPIダイレクトとを比較して「気持ち悪いくらい変化がある」とか記述しているサイトがいくつかあるんだが。

これ、単に音量が変化するだけです。変化はしますが音質が良くなるってのは勘違いです。

その他、CD再生時のジッターとかも超能力者の世界としか思えないんだけど疲れたので省略。あと光ケーブルより同軸ケーブルの方が音が良いとか。CD-Rは紫じゃなきゃダメとか。脳が膿んでるよ。1bitもデータ差無いのに違いが分かるなんて。凄すぎでしょう。

とにかくオカルトから解放されればオーディオ趣味なんて安く楽しめるものなんだけど、それではメーカーは儲からない。だからこんな状況になってるんだろうなあ。聞いてる人がハイレゾ音源に満足してるんなら、それをとやかく言う必要も無いのだが。経済は潤うしね。うん、ハイレゾ万歳。音場を安定させる御札と壺もご一緒に如何ですか?

## 9/29追記

カーネルミキサーの件、入力ソースとDACのbit深度とレートを合わせる事が可能になったのはWindowsVista以降らしい。XP以前では全て48kHzに変換されてしまっていたらしい。当時私はASIOしか使ってなかったから知りませんでした、すみません。確かに変換で微妙に些細に音は変わりますね。

でも恐らく、その辺の変換にブラインドで気づける人はまずいないんじゃないでしょうか。ましてや当時の音源なんてHDD容量もメモリ容量も少ないからMP3を始めとする圧縮音源ばっかりだったし。それとも、音が悪い悪い言ってる人は当時から無圧縮の巨大なWAVファイルばっかり使ってたんですかね。やっぱり不思議です。