文句たれ日記飛び地の避難所

文句たれ日記飛び地(http://blog.jiru.com/)のアーカイブ

セルフィン・家出した猫の捜し方

数日前の検定の件で書いた、早坂未紀は80年代のSF漫画家。当時としてはかなり画期的な絵を描く人でその絵柄から元祖ロリコン漫画家とか呼ばれる事もあるが、私は彼の真価はストーリーの叙情性にあると思っている。幽閉された超能力者の悲哀とか、超空間を守る竜に乗る孤独なお姫様とか、割と救いのない物語に味があった。ギャグ作品もあったけど、奥底にはどこかもの悲しい通奏低音があったように思う。

で思い出したのが彼の最後の作品、「セルフィン・家出した猫の捜し方」。この本だけマンガでは無く絵本。それもガチで子供向け、大きいお友達向けパロディとか一切なし。絵と文章に食い違いがあったりして完成度はイマイチなんだけど絵本処女作だし、十分良い出来。これを最後に漫画家も絵本作家も引退しちゃったのは本当に残念。

昔自分で買ったやつは段ボールの山の奥の方で多分次の引っ越しまで発掘できないっぽいので、尼で中古を買ってみた。

本の状態は皺とか折れとかあってイマイチだが、落書きも無くなんとか読めた。うん、懐かしい。

ある朝、家からいなくなった猫のセルフィン。飼い主のケイティは猫を探す旅に出る、というお話。ストーリーは書かないでおくけど、グリム童話の明るい部分とルイスキャロルのとぼけた部分を足して2で割ったようなほのぼの路線が続く。しかし明るく終わるかと思いきや終盤ズドンと突き落とされます。 いやこれ年少組なら泣くぞ? 最後はハッピーエンド風にはなるけど、少しだけ毒を含ませる古来の正しい童話の終わり方ではあるかと。

出版元は東京三世社。少年少女SFマンガ競作大全集とか出してた所だが、一般的にはエロ本屋としての方が有名だろう。その辺の流通的な問題がこれ一冊で終わってしまった原因なんじゃないかと睨んでいるのだが。返す返すも残念。