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圧縮音声

昨日iTunes話を書いたが、解像度の高いモニターヘッドホンで圧縮音声を聞くのって意味あるの? バカ? 恥ずかしくない? それよりぬこ出せ? とか言われそうなのでちょっと思う所を書いとこうと思う。

私は圧縮された音声を聞いても割と平気だ。もちろん限度はあるがiTunesAACだとクラシック等の完全生演奏で192kbps、その他電気音楽なら128kbpsもあれば特に不満なく聞ける。物によっては64kbpsでも全然OKだ。

世の中の音楽好きというかオーディオ好きな人たちには音声圧縮はダメ・ロスレスまんせー・ボーレートは高ければ高いほど良いという人が多いようだが、正直それってどうなの、と日頃思っている。それ以外にもアンプやスピーカーの忠実度にやたらうるさい人たち。

あと上等なオーディオシステムについて良く言われるのが「まるで目の前で演奏しているような」というフレーズ。これも本当に分かって言ってるのかなあと思う。

実際のところ、生演奏の音質というのはオーディオ的には決して良くない。演奏場所の影響を大きく受けて大抵は歪みまくるし、どんな高級ホールでも反響によるフラッターでノイズは入るし、演奏者の出す楽器以外の音も結構あるし、隣のオバハンの香水は臭いし。

学生の頃から合唱団とバンド演奏をメインにやってきた。合唱については音楽の友ホールとか武蔵野音大とかで指揮棒を振ってきた。正に「目の前で演奏」している状態だ。しかし指揮者台に立っていてさえ、音響は決して最良ではない。盛大に歪む。左右の音響板からの反射は位相のずれでノイズになる。床板は鳴る。服の衣擦れの音もする。そういや本番中に鼻水すすった奴もいたな。

アコースティックギターの弾き語りなんかでも、目の前で聞けば声とギターの音量バランスは悪い。口とギター別々にマイクを置いて初めてそこそこ聞けるものになる。

バンド演奏なんてのは最初から雑音の塊だ。完全生はドラムスだけ、ギターもベースもS/N比の悪いエフェクターやアンプを通すんだし、そもそも歪ませる事前提だ。ピュアな音なんてあり得ない。

そんなこんなで、生演奏はすべからくノイズと歪みの集合体なのだ。それらの無い音なんてのは音楽に関しては幻想に過ぎないと思っている。

なので、今更音声圧縮で多少歪みやノイズが乗った所で大して気にはならない。どうせ脳内で原音に補正してしまうのだから。

知り合いを見回しても演奏経験の長い人ほどオーディオには凝らない傾向があるように感じる。(サンプル数は数十だから統計的に有意とは言い難いけど。) ひどい人になるとクラシックを数千円のショボいラジカセで聞いていたりするが、本人それで十分内容を聞き分けてパートのミスを指摘したりするのだから実は凄い耳だったりする。

なので、オーディオにやたらこだわる人の言う事は眉唾で聞くようにしている。音響が趣味なのと音楽が趣味なのとでは、似ているようで全然違うのだから。そこを見極めないと会話にならない。

まあ実際は音楽抜きのオーディオ話も楽しいんだけどね。でも原音原理主義はいけません。それは近づいちゃいけない人だ。

そして最初に戻ると、解像度の高いモニターヘッドホンで圧縮音声を聞く事は意味無くありません。確かにノイズは乗るし小さな音は間引きされたりしますが、それらを除外してもまだ音楽用ヘッドホンでは再生しきれない音があるから。これは圧縮とは関係ない話なんですよ。

...色んな人を敵に回した気がしますが、さて。